
今回の記事は、「クラウドアトラス」という映画について!
ついに、この時がやってきました!この「クラウドアトラス」という映画を紹介できる時が!
映画好きにとって一番苦手な質問「一番好きな映画は何ですか?」という質問が、この映画を知った日を境に、簡単に答えられる質問に変わりました。
人生でダントツで、一番大好きな映画です。おそらく第2位は「インセプション」。最近の映画で言えば、「テネット」が最高でした。
実はずっと書きたいと思っていたんですが、書けなかった。その理由は、難しすぎるから。こんなに複雑な映画は中々ありません。ストーリーはまだしも、映画の構成、その裏に隠されたメッセージ全てが複雑。
しかし、その構成と内容を理解した瞬間、全ての扉が開き、涙が止まらなくなります。
僕は、この映画を通算20回は見ていると思うのですが、一度も泣かなかった時はないですし、この記事を書く数分前に5分間の予告映像を再度見て、泣きました。笑
本当に素晴らしい映画。ストーリーも、構成もさることながら、圧倒的な映像美です。
この記事では、クラウドアトラスの解説(まだ観てない方向け)と、ネタバレありきの全解説(2回目以降の方向け)をしていきます!
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INDEX
クラウドアトラス(映画)とは

クラウドアトラスは、マトリックス3部作の監督、ウォシャウスキー姉妹(公開当時は姉弟)とトム・ティクバによって監督された映画で、日本では2013年春に公開されました。
トム・ハンクス、ハル・ベリーを始め、ヒューゴ・ウィーヴィング、ジム・ブロードベント、スーザン・サランドン、ヒュー・グラントと大物俳優が顔を揃え、製作費100億円もかけたものの、失敗に終わり、日本でもあまり知名度は高くはありません。
映画内では、6つの異なる時代のストーリーがアトランダムに展開され、各ストーリーに同一の俳優が何度も登場し、「生まれ変わり」を連想させます。
全く異なるように見える6つのストーリーですが、次第に重なり出し、似たような展開を見せます。それは何故か。人は何故、同じ過ちを繰り返すのか。何度も何度も。
「人間の生きる意味」、「輪廻」、「時空を超えた愛」を大きなテーマにしながらも、一方でそれらは一つの要素、そして映画のメッセージを伝えるための手法に過ぎず、この映画の一番伝えたいメッセージは、「一歩踏み出せ」、「大事な人を愛せ」というところにある気がしました。

何度でも言います。この映画、半端ないです
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クラウドアトラスの面白さ
6つの異なる時代のストーリーが並行で進む

クラウドアトラスでは、時代も場所も違う6つのストーリーが同時並行に進んでいきます。
一番古い時代の1849年から2321年まで、別々の時代に、別々の場所で、別々の出来事が起こります。
- 1849年:南太平洋諸島
- 1936年:スコットランド
- 1973年:サンフランシスコ
- 2012年:ロンドン
- 2144年:ネオソウル
- 2321年:崩壊した地球のどこか
しかも、これらのストーリーがアトランダムに転々としながら進みます。一つのストーリーが10分程度続いたと思えば、次のストーリーは5秒ほどで終わったり。
そのために難しく感じるのですが、その繋ぎ目一つ一つにも意味があるんです。そこがこの映画のすごいところ。実は映画自体、3時間と長尺であるのですが、1秒1秒無駄なシーンが一つもありません。

同じ俳優が各時代で、別々の役を演じる

これが、クラウドアトラスの大きな魅力、そして映画のテーマの一番核心に繋がる部分。
同じ俳優がそれぞれの時代に別の人物として登場し、同じ相手と何度も出会ったり、別れたり、愛し合ったり、傷つけあったりします。
各時代を通じて似たような行動をとり続ける人もいれば、良い人になったり悪者になったりを繰り返す人も。
特殊メイクによって、白人が黒人やアジア人になったり、女性が男性になったりしているので、解説を見るまで全く気付かないことも多い。

ストーリーの主人公には、ほうき星のアザがある

映画を見ていて、ふと気がつくこと。それは、それぞれのストーリーの中での主人公にあたる人物に「ほうき星のアザ」があることです。
アザについて語るシーンがあったり、わかりやすく出てくる時もあれば、サラッと登場することもあります。
これは、ストーリーの主役にあたる人物、そのストーリーの中で大きな何かを成し遂げた人物に刻み込まれています。
他の時代では、脇役に過ぎなかった(ほうき星とはかけ離れた)人物が、この時代では偉大なことを行い、ほうき星を持つ人物になったり。人間の浮き沈みを表現しています。
ストーリーごとに映画のジャンルが異なる

映画のジャンルとして、「SFですか?」と、聞かれることが多い。
答えは、「SFであり、ヒューマンドラマであり、ミステリーであり、ラブストーリーであり、伝記モノでもあり、コメディでもあります」。
というのも、6つのストーリーで、それぞれジャンルが異なるためです。
- 1849年:奴隷貿易と解放運動 → ヒューマンドラマ、伝記
- 1936年:ゲイの作曲家の苦悩と奮闘 → ラブストーリー
- 1973年:大手石油企業の陰謀暴露 → サスペンス
- 2012年:老人ホームからの大脱出 → コメディ
- 2144年:人工クローンによる革命 → SF
- 2321年:崩壊直前の地球でのできこと → ミックス
以上のように、それぞれの時代でストーリーも、映画の雰囲気も全く異なります。
それにも関わらず、同じような人間(同じ俳優による)がいて、似たような行動をとったり、似たようなトラブルに遭遇したりします。時代は変わって、テクノロジーや環境によって生活スタイルが変わっても、そこは変わらない。しかし、それは当たり前です。
何故なら、全ては人間(の感情)によって作られているもので、他でもない人間同士のやり取りだからです。人間の一つの選択、一つの優しさ、一つの裏切り(罪)で、未来が出来上がっていきます。
悲しい時もあれば、嬉しい時もあるし、弱い人間になる時もあれば、革命を起こすようなパワフルな人間になる時も。愛に溺れる時もあれば、結ばれずに苦しい思いをする時もあります。
でもそれって、誰にでもある。一人の人生の中で、何度も訪れます。グルグル回ってる。「そうした人がいる」「自分とは違う」のではなく、誰にでも備わっている、誰にでも起こり得ることです。
ほうき星のアザ同様、そうした人間の強い部分と弱い部分、喜怒哀楽、人生の転換を「映画のジャンル」という形でも表現しているような気がしました。
ストーリー間を繋ぐきっかけがある

一つ一つのストーリーは、その中で完結していますが、ストーリー(時間軸)を超えて繋がるきっかけが、それぞれの前後にあります。具体的には以下です。
- 人喰い族の残した歯を見るアダム・ユーイング
- アダムの航海日誌を読むロバート・フロビシャー
- ロバートの手紙を読むルイサ・レイ
- ルイサ事件の伝記を読むティモシー・カベンディッシュ
- ティモシーの映画を見るソンミ451
- ソンミの教え(宗教)に従うザックリー
上記のように、1から2、2から3と繋がりが見えてくるのですが、面白いと思ったのは「6から1」への繋がり。
6つ目の崩壊後の地球では、生活が原始的なものに戻り、人喰い族が誕生しています。ここでの人喰い族のエピソードが、1つ目の人喰い族の残した歯にリンクしている。
人間は進化していったにも関わらず、未来で原始的かつ暴虐的な生活に戻っている。つまりグルグル回っているんです。輪廻のように。
「なぜ人は同じ過ちを繰り返すのか。何度も何度も」

ここまでが、初見者用の説明!クラウドアトラスが気になった方は、上記の予告を見てください!この予告を見れば、いかにこの映画が素晴らしいかわかるはずです。
もう少し予備知識を付けてから観たい!という方は、もう少し読み進めてもらっても大丈夫です。かなり複雑な映画なので、、
クラウドアトラスは、プライム会員であれば無料で見れます。30日間は無料なので、オススメです。プライム会員以外は、300円でオンライン視聴可能です。
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クラウドアトラスのストーリー(ここからネタバレあり)
波乱に満ちた航海の物語(1849年)

アダム・ユーイングは、奴隷貿易で成功している義理の父(ムーア)の仕事に、弁護士として同行。南太平洋諸島へと向かいます。そこで、悪徳医者(ヘンリー・グース)に毒を盛られ、死にかけるところを、黒人奴隷に助けられます。
無事に故郷に戻ったアダムは、妻と一緒に義理の父の元を離れ、奴隷解放運動に参加することを決意します。
幻の名曲の誕生秘話(1936年)

作曲家であり、ゲイであるロバート・フロビシャーは、恋人のルーファス・シックススミスと別れ、天才作曲家のビビアン・エアズの元に弟子入りします。
ビビアン・エアズのアイディアを元に、「クラウドアトラス六重奏」をほぼ完成させますが、その著作権についてビビアンと揉め、手違いでビビアンを拳銃で撃ってしまったことからお尋ね者に。
曲を完成させた後、未来に思いを馳せ、自殺します。来世は、シックススミスと良い時代に生きられることを信じて。
巨大企業の陰謀(1973年)

ジャーナリストのルイサ・レイは、ひょんなことから原発の不祥事を暴露しようとしている原発関係者のルーファス・シックススミス(ロバートの恋人。42年後)に遭遇し、その後の調査で真実を知ります。
石油会社のロビイストが、石油の利権を守るために、大規模な原発事故を起こそうとしているものでした。これを暴露しようとするルイサの口封じのため、殺し屋が雇われますが、最終的には暴露に成功します。
ある編集者の大脱走(2012年)

編集者のティモシー・カベンディッシュは、作家ダーモットの小説の大ヒットにより大儲けしますが、トラブルに巻き込まれ、兄デニーに助けを求めます。
それを面倒に感じたデニーは、カベンディッシュを老人ホームに閉じ込めることに成功。老人ホームに囚われた他の老人と共に、老人ホームからの脱出を試みます。
伝説のクローン少女と革命(2144年)

統一国家によって、言論の自由が奪われ、完全統制社会となっている未来。自由な意思を持つことを許されない人造クローンが、純血種(人間)によって労働力(奴隷)として使用されています。
クローンであるソンミ451は、革命家へジュ・チャンに見出され、共にこの悲劇を生むシステムを破壊するために立ち上がります。
崩壊した地球での戦い(2321年)

文明の崩壊した地球において、ある島の住人ザックリーは人喰い族の襲撃に怯えながらも、村で素朴に暮らしています。ある日、「昔の人」の技術でこの島にやってきたメロニムに懇願され、悪魔の山と呼ばれている地域に案内人として向かうことに。
メロニムが悪魔の山に行く目的は、地球が滅亡の危機にあり、他の惑星に行くために、地球外コロニーにSOSを送ることでした。
ザックリーが信じる宗教では、悪魔の山に行くことや、お告げを破ることはタブー。しかし、本当にお告げを信じることだけが正義なのか、生き延びるためには何をするべきなのかを葛藤します。

この6つのストーリーを見て、人間は進化している、より良い社会になっていると思いますか?奴隷制度を廃止し、差別をなくし、自由を作ろうとした未来で、言論が再び制限され、奴隷(クローン)が生まれ、文明が崩壊するまで至る。これは、進化ですか?
何故、人は同じ過ちを繰り返すのか。
全キャラクター、関係性の解説

ここでは、6つのストーリーにおいて、各俳優が演じるキャラクターについて解説していきます。ちなみに上記の表は、2時間かけて作った力作です。
上記の表を見て、この映画がいかに狂気の沙汰かがわかるかと思います。笑 メインキャストの数人以外も、何度も登場しているところも凄い。
ジム・スタージェス

まずは、ジム・スタージェスについて。
彼は最初から最後まで、良い人間、特に他人のために立ち上がれる人間を演じています。
①では奴隷解放に向かい、⑤でもクローン(奴隷)解放に尽力します。また、④でも、老人ホームから脱出してきた老人達のために立ち上がるシーンもあります。
他の人との繋がりで特記すべきなのは、やはりぺ・ドゥナとの関係性。
⑤で共に戦い、二人の間に強い絆が生まれたのですが、結ばれることなく、政府との戦いで二人とも殺されてしまいます。一方で、①では夫婦として幸せに結ばれている。また、実は③でも、写真上でメーガンの両親として結ばれています。

ちなみに①と⑦において、どちらもアダムという名前。トム・ハンクスがどちらの時代でも、アダムが所有していた青い宝石を盗むシーンが印象的です。
ベン・ウィショー

次に、ベン・ウィショー。
彼は主に、ジェームス・ダーシー演じるシックススミスの恋人としての役割が印象的で、他では割と脇役が多い。
その中で一つ面白いのが、ジム・ブロードベントとの関係性。
②でビビアンの才能に触れ、恋をしてしまいますが、結ばれるどころか罵倒されてしまう。しかし、④では女性に生まれ変わり、その上で「不倫」という方法を用いてまで、ティモシーと結ばれようとしています。
ハル・ベリー

次に、ハル・ベリー。
彼女の人生は波乱万丈です。奴隷(①)、ナチス時代のユダヤ人(②)と、不遇の人生を送ってきますが、③でようやく転機を迎えます。一つ大きなことを成し遂げたことで、魂のレベルが昇格。その後は、比較的幸せな人生へと向かっていきます。
また、他人との関係性で欠かせないのが、言うまでもなくトム・ハンクス。二人は、何度も巡り会い、何度もお互いを助け合おうとします。しかし、うまくいかない。
また、出会う度に、二人が「見たことある気がする」と言う表情を一瞬するところが見逃せません。
ジム・ブロードベント

次に、ジム・ブロードベント。
彼は、④で事を成し遂げるまで、あまり良い人間ではありません。一方で、その後は当たり障りのない役柄になっています。
他人との関係性では、時間を超えた繋がりは見当たりませんが、④でスーザン・サランドン演じるアーシュラと、数十年ののちに再会し結ばれています。
ぺ・ドゥナ

次に、ぺ・ドゥナ。
彼女の人物像としては、強者によって支配される世の中に疑問を抱いていなかったが、真実を知ったことで、それに立ち向かうことを決意できる強い人間を示しています。
①では父に従い続けていた一方で、最後には「もう言いなりは嫌です」と、はっきり言い切ります。⑤でも、クローンとして規律を守ることに忠実でしたが、真実を知ったことで、危険を冒してでも革命を起こすことを決めます。
そうした決意の横には、常にジム・スタージェスがいるところもポイントです。

余談ですが、この二人は映画の公開後、プライベートでも結ばれています。
「こんな美しい話があるのか、、」と思いますが、残念ながら既に破局しています、、二人が結婚でもしていたら、この映画の面白さが数倍増すのですが、そう上手いことはいかないですね、、
トム・ハンクス

次に、トム・ハンクス。
トム・ハンクスは、この映画の中で一番わかりやすく、一番面白い人間を演じています。というのも、良い人間になったり、悪い人間になったりを繰り返しているんです。
良い人間になろうとするのですが、自分の中の弱い部分が出てきて、なかなか決断できない。人間らしい側面を沢山見せてくれる。
①②では、弱者の弱みに付け込む最低な男を演じ、自らも「弱者の肉を強者が食う」と発言。しかし、③においてハル・ベリーに遭遇したことで、自分の中の何かに変化が生じ、大きな決断(陰謀の暴露)を決意します。
この時、「昨日までの僕ならこんなことはしなかった、(ハル・ベリーと出会ったことで、)何か大事なことが僕の中で起こった気がした」と、述べています。しかし、残念ながら、飛行機ごと爆破されてしまい振り出しに。
その反動のせいで、④にて殺人犯になってしまいます。しかし、ここでも面白いのが殺人を犯す直前に、ハル・ベリーと目が合っているんです。

そして、この表情。一瞬、考え込みます。「ここで罪を犯したら、また悪者に戻ってしまう」と言わんばかりに。しかし、感情的になってしまい、最終的には殺人者に。
そして最後、⑥の時代にハル・ベリーと再会し、自分の中の弱い自分(オールド・ジョージー)と向き合い、自分を見つめ直したことで、魂が昇格し良い人間になります。
面白いのが、⑥でも最初はアダムを見捨てるなど、弱い自分との葛藤を見せているところ。本当に人間らしい。
ここから伝わるメッセージとしては、「人間は最初から偉大な人間として生まれてくる訳ではない」ということ。誰にでもスタートがあって、弱い時があって、その上で成長し、物事を達成していく、ということを感じさせられました。つまり「誰でも、なりたい誰かになれる」と。

どのストーリーにおいても、序盤に登場してくるほうき星のマークが、この時代には最後の最後に登場するのも、そのためです。それまでは、トム・ハンクスがほうき星に値する人物になり得るか、不明だったのでしょう。
髪の毛の下にある(というオシャレ演出!)ため、若い頃には確認できませんが、おそらくハル・ベリーに会うまで、アザはなかったのではないでしょうか。その後の老化で、出来てきたと考えると面白いです。
ジェームズ・ダーシー

次に、ジェームズ・ダーシー。
実はメインキャストの中で、ほうき星のアザがない唯一の人物、それがジェームズ・ダーシーです。「大した人物じゃないからじゃない?」そう思いがちですが、それは間違い。
僕の意見としては、⑤において、ソンミ451の処刑後に活躍した人物が、ジェームズ・ダーシー演じる記録官であると思っています(あくまで想像)。おそらく、彼はその後、ほうき星のアザを獲得したのではないかと。トム・ハンクスのように。

そう思う理由は、最後に記録官がソンミにした質問からのやりとりにあります。

負け戦と知っていたのに、なぜ身を投じた?

世界に知らせなくては真実は隠れたまま、それが嫌だった

誰もその真実を信じなかったら?

もう誰かは信じてる

↑そして、この表情。感化されとるんです。
この面談の後にソンミは処刑され、一味も崩壊しています。にも関わらず、⑥で明らかになっているように、彼女の言葉は後世に残っており、宗教にまでなっている。
言論統制されている時代で、なぜ彼女の言葉が残ったのか。誰が語り継いだのか。おそらく、ジェームズ・ダーシーであったと、僕は確信しています。
キリストの処刑後、彼の言葉を語り継ぎ、キリスト教を大成させたペトロのように。
ヒューゴ・ウィービングと、ヒュー・グラント

次に、ヒューゴ・ウィービングと、ヒュー・グラント。
この二人は、どの時代でも悪い役に徹しています。トム・ハンクスのように、どこかの時代で魂が良い方向に昇華することを祈ります、、
その他のキャスト

本当に面白いのが、メインキャスト以外も、何役も演じているところ。
あまり深いつながりはありませんが、キース・デイヴィットは人助けに勤しむタイプであったり、シルベストラ・ル・タゼルは、悪いことでも長いものに巻かれるタイプであったり、魂の似た部分が見え隠れします。
クラウドアトラスで語られるメッセージ
クラウドアトラスの映画の中には、何度も語られるセリフや、似た意味を持つセリフが多く登場します。
最初は意味がわからないことや、別の意味に捉えがちなもの(ミスリード)も多いのですが、何度も映画を見て、本当の意味がわかると、感動を通り越して、嗚咽ものです。
こうした何度も語られるセリフから読み取れるメッセージは、映画のストーリーを追うのに肝になってくる。
ここでは、セリフから読み取れるメッセージと、僕が感じた映画からのメッセージを紹介します。
人には序列がある、出る杭は打たれる

これは、6つあるストーリーの中、多くの時代で語られることの多い、大きなテーマの一つ。
奴隷貿易・女性軽視、ユダヤ人迫害、資本主義、老人ホーム内での優位性、意思を持たないクローン、と時代が変わっても、人が人を支配しようとする構造は変わりません。
さらに、その枠(ルール)から外れようとするものは、迫害されます。「ルールは守られねばならない」と言う洗脳を植え付けさせられるセリフです。
人には生来、序列がある、それに逆らう者は幸せになれない、解放運動に参加すれば家族にも不幸が及ぶ、リンチや処刑の危険も、あがいても大海に雫を一滴落とすだけ
弱者の肉を強者が食う

①の時代、奴隷と同様に女性の地位も低く、「女の本質」について問われたアダムが答えられないシーンがあります。
ルイサ・レイの時代になると、女性の地位を向上させるための「ウーマン・リブ運動」が起こっていることが示唆される一方で、シックススミスの「姪は女だが優秀だ」のセリフからも、まだ女性軽視の考えが根強いことがわかります。
全ての序列・垣根は幻想、乗り越えようとする者は乗り越えられる

これは上の「人には序列がある」と言う考えに対して、反抗した人々が語る言葉。
この人間社会に「序列」というものはない。あるものは人間が作り上げた幻想に過ぎない。それを諦めてしまったらお終いで、諦めずに乗り越えようとすることが大事。
全ての溝は思い込みだ
悟ったんだ、騒音と音楽の垣根など幻に過ぎない、あらゆる垣根は幻想だ、必ず超越できる、乗り越えようと思うものには超えられるはずだ、今この瞬間、君の鼓動を間近に感じる、僕の魂は時空を遥かに超える
悲劇を生むシステムも壊すべき、生まれがどうであれ、私たちは同じ人間、命に代えても戦うしかない、人々に真実を伝えなくては
雫はやがて大海になる
ここでも一番わかりやすいのは、奴隷解放運動に参加することになるアダム・ユーイングと、クローン社会の解体を目指すソンミ451のストーリー。
一方で、宗教や掟に囚われているザックリーや、同性愛について悩むロバート・フロビシャーも、似たようなことを述べています。
人は他者との繋がりの中で生きていく、他者との繋がりが未来を作る

これも、セリフを変えて、ソンミ451や、アイザックが語っています。
知覚され人は存在する 他人の知覚を通して初めて己を知るのだ 不滅の魂の本質は言葉や行いによって決定され、その因果の中我々は永遠に生き続ける
命は自分のものではない 子宮から墓跡まで人は他者と繋がる 過去も現在も、すべての罪が、あらゆる優しさが、未来を作る
信念は恐怖や愛と同じく受け入れるしかない 信念は人生の行路も変える
昨日まで歩いていた人生が今日別の方向に向かう、昨日までの僕ならこんな行動はしなかった、時空さえ超えるこれらの力は、人の将来像も変えてしまう、我々の誕生前から死後まで消えることはない、我々の人生や選択は、瞬間ごとに意味付けられる、我々の人生が交差するその瞬間、新たな方向性を指し示す
命題:僕はルイサ・レイに恋をした、会ったばかりであり得るのか?
だが、何か大事なことが、僕の中で起こった気がした
なぜ人は生まれて、人と出会い、人を愛し、人を殺し、死んでいくのか。死んだ先には何があるのか。死んだ後は、無なのか。
この映画では、「人は他者との繋がりの中で生きていて、死んだ後もその人の中で生き続ける」ということを言っています。
また、「人は一人では生きていない。自分の選択や知識も他者との関係の中で構築されている」というのも重要なポイント。
ほうき星のアザを持つ(偉業を成し遂げる)中心人物は、常に誰かから、または過去の自分の影響を受けて、行動に出ています。人間は知らず知らずの間に他者の影響を受け、他者の知識や考え方を吸収しているんです。自分一人で獲得した知識なんて、あり得ません。
ロバート・フロビシャーの例を見てみます。
ロバートが作曲したクラウドアトラス交響曲は、なんとなく映画のストーリー上(本人もそう言っているため)、「ロバートが作曲したもので、ビビアンに盗まれかけた」と、考えがちですが、実際は二人で作ったもの。
最初にビビアンの頭に降りてきたアイディアをロバートに弾かせてみたところから始まっています。それからは、二人で時間を共にする中で、言葉以上の繋がりの中、曲が完成していきます。
人は一緒に同じ時間を過ごすことで、全てを語らなくても相手の考えていることがわかってくるし、考え方にも影響を受けてくる。知らない間に影響を受けているわけです。
間違いなくロバートはビビアンの影響を受けたにも関わらず、去り際にロバートは「これは一人で作り上げた」と、妄想してしまっているところに、人間の若さと弱さを感じます。
変えるものと残すものを見極める、時には疑うことも重要

変えるものと残すものをどう見極めるか
奴隷貿易時代に、上記のような発言がありました。時代にそぐわない悪しき風習を残すのも罪ですが、無知も罪です。世界を知り、より良い世界に変えるために、行動するべきだというメッセージを感じました。
そして、それは宗教も同じです。信仰を持つことは素晴らしいし、慣習や文化を尊重することは美しい。僕もそう思います。しかし、必要な時は、それを疑い、変えていくことも重要です。

⑥の時代では、キリスト教ではなくソンミの宗教の時代であるため、西暦は使われていません。
さらに、このストーリーでは、ザックリーが宗教から脱却する瞬間を描いていると共に、宗教の力も暗示しています。それは、アベスによる3つのお告げ。
- 橋が崩れたら下に隠れよ
- 血濡れても手放すな
- 敵の寝首をかいてはならぬ
ザックリーはこのお告げを守り、1のお告げを信じたことによって命拾いします。これが宗教の力。信じることの力です。
一方で、2のお告げの時には悩み出します。それは、悪魔の山に行くことに怯え出したため。オールド・ジョージー(弱い自分)に唆されているためです。

そして、3のお告げについては、信じませんでした。
もしも信じていたら、自分も殺されていたでしょう。信じることに疑問を感じたんだと思います。悪魔の山にて、ソンミの本当の姿についてメロニムから聞かされたことも大きいと思います。
また、最後に人喰い族との戦いに勝利した際、メロニムが「ソンミのおかげね(Thank Sonmi)」と言ったのに対し、「いいや君だ(No. Thank YOU)」と。
ここで、完全に宗教から切り離されたことを暗示しているのではないかと思います。
輪廻転成について

ソンミが「過去から未来まで繋がっている」と言ったり、ザックリーが過去の自分を見たり、ビビアンが未来を見たり、ルイサが聞いたことのあるはずのない曲を覚えていたり、ティモシーが既視感を覚えたり、過去の魂の記憶を暗示させるシーンは沢山あります。
俳優が何役も演じているのもそのため。ソンミも生まれ変わりや、死後の世界、来世について記録官との会話で述べています。
不滅の魂の本質は言葉や行いによって決定され、その因果の中我々は永遠に生き続ける
それぞれの生き方が永遠の魂に影響する
死は扉に過ぎない、閉じた時、別の扉が開く、私にとっての天国は新しい扉が開くこと
良い行いをすることで、魂に影響し、来世では良い人間になったり、良い時代に生まれることができるということです。
同性愛が認められていない時代に生まれたロバートが、自殺する前にシックススミスに言う「良い時代で君とまた会う」と言う言葉も、この考えから来ています。
つまり、輪廻転成はあるというのがこの映画の考え。

しかし、簡単に「生まれ変わりの映画ね」と、考えるだけだと面白くないです
自分の大切な人を見つけること、そしてその人を愛すること

この映画では、人間が作り上げた不幸を生むシステムに囚われる人間達の葛藤の中、諦めてしまう人もいれば、運良く自分の大切な人、キーパーソン(ジム・スタージェスとぺ・ドゥナ、ハル・ベリーとトム・ハンクス)に出会えること(目があうだけではなく)で、自分の中の何かが変わって、偉業を成し遂げることができました。
「人との繋がり」が重要なんです。
しかし、そうした運命の人にめぐり合うのは簡単ではありません。巡り合って、一瞬ハッとしても「その人がそうだ」と気づくことができません。トム・ハンクスがわかりやすいように。
来世で一緒になることを誓ったはずなのに、なぜ人は大切な人を忘れてしまうのか。
これも「何故、人は同じ過ちを繰り返すのか、何度も何度も」に、繋がる部分。現実的な奴隷制度や悪法だけでなく、精神的な輪廻上での忘却にも繋げているんです。
時空を超えた愛について

上の輪廻の話で、魂の上における自分の大切な人がいるという話をしました。つまり、「時空を超えた愛」です。これは存在するのでしょうか。
これについて、シックススミスの姪のメーガンがこう言っています。
叔父は科学者だけど、愛は存在すると信じていた、ある種の自然現象として、愛は死をも乗り越えると
「人間との繋がり」のところでも話したように、出会ったばかりなのに、何年も一緒にいたように感じる人がいたり、オトゥアが「友情は目でわかる」と言っていたり、目が合ってハッすることがある。
何年も遠距離恋愛をしている相手を愛したり、死んでしまった友達や家族を思ったり、許されない愛に溺れたり、何故人間はそれができるなのか。
クサいセリフですが、そこには、間違いなく「愛の力」があるはずだ。と、言っています。


40年以上前のロバートの手紙を読みながら、今もロバートが近くにいるように感じている、上の描写がとても印象的。

ティモシーが思い出の駅を通り過ぎる際に、数十年前の自分達を見るのも同じです。6つのストーリー間を超えての愛だけでなく、僕らが生きる今この瞬間にさえ、そうした時空を超える愛の力はあるんです。
「自分の大事な人を愛せよ」というメッセージだと、僕には感じました。
全伏線回収

ここでは、この映画内で散りばめられ(まくっ)ている伏線を、わかる限り回収していきたいと思います。映画の順番に箇条書きにて。
- 闇からこちらを伺い囁く声、オールドジョージー → 弱い自分
- 話は前後するし、厄介な仕掛けがある、でもこの狂気の物語には必要が技法 → ティモシー執筆中の小説、クラウドアトラス映画自体、人の人生
- シックススミスが見せる姪メーガンの写真 → ジム・スタージェスとぺ・ドゥナが両親
- クローンの唯一の希望である卒業 → 新しいクローン作成のための再生処理
- ザックリーがアダムの青い宝石を盗む → ①でもヘンリーがアダムの青いボタンを剥がす
- アベスが持っているソンミの聖書 → 実際にソンミが来ていた服から作製(特典映像より)
- アダムの航海日誌の半分の行方 → ビビアンの部屋のピアノの台調整に使用
- ジョゼットが来て、すぐにデニーが折れた理由 → ティモシーとジョゼットが不倫していた
- ケッスリングとジョカスタが結ばれない理由についての、ロバートの「何でですか?」 → ドイツの情勢を知らないのではなく、なぜ愛する二人が結ばれちゃいけないのかの単純な疑問
- クラウドアトラス交響曲がアメリカで数枚しか出回っていない理由 → ビビアンが低く評価した
- ソルジェニーツィンのように執筆を続けたが、彼のように孤独ではなかった → アーシュラと結ばれる。この映画を見たソンミは、ソルジェーツィンの言葉を語る
- どぎつい照明のカフェにいて、ウェイトレスが全員同じ顔 → ソンミが働くカフェを夢見る
- 死者は常にそばにいる、耳をすませば、彼らの声が聞こえる → 過去の自分
- ザックリーの「突然来て、真実を言うが、狙いはなんだ?俺らを奴隷にするつもりか?」に対するメロニムの表情 → 自分も過去に奴隷や、差別を受けた時があった
- ハビエルの「本のネタができた」 → 「ルイサ・レイ事件 / ハビエル・ゴメス著」
その他にも、ビビアンの家とティモシーが軟禁されていた老人ホームが同じ建物だったり、ロバートの作曲した「クラウドアトラス交響曲」は、6つの各ストーリーでロックやジャズになって、登場しています。探してみるのも面白いです!
クラウドアトラスを観る、読む
映画(オンライン視聴)
クラウドアトラスは、アマゾンでオンライン視聴が可能。プライム会員なら無料。それ以外は、300円です。購入も1500円で出来ます。
アマゾンで観る
映画(DVD購入)
何度も見るのであれば、DVD購入がオススメ。個人的には、少なくとも2回は見て欲しい。ブルーレイには、監督がネタバレ含めて語る特典映像が入っているので、ハマってしまった人にはオススメです!
小説
クラウドアトラスは、原作は小説。これも名作です。映画にハマった人には、是非読んでもらいたい。映画では省略されている部分が沢山あります。むしろ、これを読まないと気付けない部分も多いです。
まとめ

ということで、クラウドアトラスについてでした!とんでもなく、長文になってしまいました、、間違いなくこのブログで最長です。笑
ただし、長年温め続けてきたことをほとんどかけたのではないかと思います。それでも、「ここは自分で感じて欲しい」と、端折った部分も多くあります。
さらに、この映画では本当に多くの伏線が散りばめられています。実際に、この記事を書くために鑑賞した際にも、2〜3個新しい伏線を発見しました。
おそらく、僕が気が付いていない点や、新しい考え方も沢山あるはずです。もし、気になった点があったら、コメントいただけると嬉しいです。

同様に超難解な、クリストファー・ノーラン最新作「テネット」の解説記事も書いているので、こちらもどうぞ!
See you!
Always think easy, go easy.